【解説】打ちっぱなしコンクリートの黒と白の模様はなぜ生まれるのか? ― 元素と化学反応から考えるコンクリートの色

打ちっぱなしコンクリートの表面をよく観察すると、黒っぽい部分や白っぽい部分が複雑に入り混じり、まるで雲や大理石のような自然の模様が見られます。
同じセメント、同じ砂、同じ砂利、同じ水を使っているにもかかわらず、なぜこのような色の違いが生まれるのでしょうか。
今回は、コンクリートを構成する元素や化合物、そして光の反射という観点から、その仕組みを考えてみたいと思います。
1.コンクリートを構成する主な元素
コンクリートは、セメント、水、砂、砂利などによって構成されています。
その中に含まれる主な元素は、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、酸素(O)、水素(H)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)などです。
これらの元素がさまざまな化合物を形成し、コンクリートの硬化や表面の色に関係しています。
代表的な化合物を、純粋な物質として大量に集めたときの色で比較すると、次のようになります。
| 化合物 | 化学式 | 一般的な色 |
|---|---|---|
| 炭酸カルシウム | CaCO₃ | 白色 |
| 水酸化カルシウム | Ca(OH)₂ | 白色 |
| ケイ酸カルシウム水和物 | C-S-H | 白色〜灰白色 |
| 二酸化ケイ素 | SiO₂ | 無色透明〜白色 |
| 酸化カルシウム | CaO | 白色 |
| 酸化アルミニウム | Al₂O₃ | 白色 |
| 酸化鉄(III) | Fe₂O₃ | 赤褐色 |
| 四酸化三鉄 | Fe₃O₄ | 黒色 |
※実際の色は結晶構造、粒子の大きさ、不純物などによって変化します。また、これらすべてが硬化したコンクリートの表面に単独で存在しているわけではありません。
2.黒い部分には黒い物質が多いのか?
黒い模様を見ると、黒い成分が集まっているように思えるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
コンクリートの表面は、セメントと水が化学反応することで形成された水和物を中心に構成されています。
表面が緻密な部分と、微細な空隙が多い部分では、光の反射や散乱の仕方が異なります。
また、水分を含んだコンクリートは、乾燥した状態よりも暗く見えることがあります。
つまり、同じような化学成分であっても、表面の状態によって黒っぽく見えたり、白っぽく見えたりするのです。
3.白い部分は何でできているのか?
白っぽく見える部分についても、いくつかの原因が考えられます。
例えば、セメントの水和反応で生成される水酸化カルシウムは、純粋な状態では白色の物質です。
さらに、水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応すると、炭酸カルシウムが生成されます。
炭酸カルシウムも白色の物質です。
こうした成分が表面に析出すると、白い汚れや白華現象として現れることがあります。
一方、白い模様のすべてが白華というわけではありません。
表面の微細な空隙や乾燥状態によって光が散乱し、明るく見える場合もあります。
4.なぜ雲のような自然の模様になるのか?
コンクリートを型枠に流し込むと、内部ではさまざまな現象が起こります。
セメント粒子の移動、ブリーディングによる水分の移動、気泡の移動、セメントの水和反応、型枠との接触状態の違いなどです。
これらは表面全体で完全に均一に進むわけではありません。
その結果、表面の組織や水分状態に局所的な違いが生まれ、濃淡のある模様が形成されることがあります。
こうして現れる不規則な模様こそ、打ちっぱなしコンクリート特有の表情の一つです。
5.コンクリートの色合わせ補修は、単なる塗装ではない
私たち株式会社イキリペアーデザインでは、打ちっぱなしコンクリートの色合わせ補修を行っています。
補修において重要なのは、単に既存の壁と同じ灰色を作ることではありません。
周囲のコンクリートが持つ黒と白の濃淡、模様の大きさ、境界のぼかし方、表面の質感などを観察し、それらを自然に再現することが求められます。
例えば、同じ灰色で均一に塗装すると、補修した部分だけが平面的に見え、周囲との違和感が生まれる場合があります。
また、施工直後には色が合っていても、乾燥後や雨に濡れた際に色の違いが目立つこともあります。
これは、塗膜とコンクリートの吸水性、表面構造、光の反射特性などが異なるためです。
自然な仕上がりを目指すには、色彩だけでなく、材料の性質や表面の状態まで理解することが大切だと考えています。
6.まとめ ― コンクリートの色は化学と光が生み出している
打ちっぱなしコンクリートの黒と白の模様は、単純に黒い元素と白い元素が分かれて存在しているわけではありません。
セメントを構成する化合物、水和反応、表面の微細構造、水分、そして光の反射や散乱など、さまざまな要因が重なって生まれています。
一見すると単なる灰色の壁ですが、その表面には複雑な物理現象や化学反応の結果が現れています。
私たちは、こうしたコンクリート本来の性質を理解しながら、周囲の風合いに自然になじむ補修を追求しています。



